「それにしても、昴デカくなったなぁ。」
「まーな。もうすぐたけ兄の事抜かすぜ。」
「ははっ。そりゃー楽しみだ。」
言いながら、たけ兄は本棚を整理する。
部屋のあちこちには
外人サッカー選手のポスター。
無数に置かれたトロフィーは、少しだけ埃が被ってるけれど
その輝きは以前と変わらず光っていて。
俺はそれを眺めつつ、ベッドに腰を下ろしたけ兄を見上げた。
「たけ兄、結婚するんだって?」
「おー、母さんから聞いた?」
「さっきね。おめでと!」
「おう。式もするから、昴もちゃんと来いよ。」
もちろん、そう答えて
俺はそこで言葉に詰まった。
ふいに思い出す、寧々の言葉。
『昴は何もわかってないって言ったのっ!!!』
それと共に、胸に走る痛みに
俺は少し躊躇いながら、部屋を片すたけ兄の背中に呼び掛ける。
「なぁ、たけ兄…、」
「んー?」
「たけ兄は、真弓さんとどのくらい…付き合ってるんだっけ?」
その質問に、本を片付けていた手を止めると
たけ兄は「…うーん、」と唸りながらも平然と答えた。
「8年、かな。」
「…じゃあ、17歳からって事?」
「そうゆう事になるなー。」