そう突っ込みながらも
カバンをソファーに置いた俺は、母ちゃんに尋ねた。


「父さんは?」

「今日遅くなるってー。」

「ふーん…。てか、それなら何でこんな御馳走作ってんの?」


テーブルには、普段なら並ばない御馳走だらけ。

そう言えば、今日の母ちゃんはいつもよりめかしこんでいるような気がする。


…今日は記念日か?




すると母ちゃんは
うふふ、と気持ち悪い笑顔を浮かべて言った。

そりゃー、もう鳥肌が立つくらいの顔で。



「たけちゃん、結婚するんだって!」

「はっ!?」


だけど、そんな母ちゃんですら気にならない程
俺の目ん玉は丸くなる。


「これから真弓ちゃんも来るみたいだから、お母さん頑張っちゃった!」


いやいや、頑張っちゃった!じゃなくて!



「じゃあ、兄貴帰って来んの!?」

「帰って来るも何も、もう居るわよ。」


二階に、と付け足した母ちゃんに
これでもかってくらいデカイ声で言った。



「そうゆう事は早く言えよっ!」


も~っ、何よー!と言う母ちゃんの声を振り切って
そのまま二階へと駆け上がる俺。


さっきまでの凹んだ気持ちはどこへやら、俺は意気揚々とその扉を開けた。


「たけ兄っ!!!」