あはは、と教室に響く笑い声がやけに耳障り。

いや、こんなの毎日の事で。



いい加減、慣れればいいのに
あたしの耳は、その声を一番に届けてくる。



ボキ!っとプリントの上で折れたシャーペンの芯。

「あぁ、もうっ!」


心の中で小さく舌打ちをして、カチカチとシャーペンをノックするけれど、どうやらゲームオーバー。


募るイライラに
前に座るヨッシーの肩を叩いた。


「ヨッシー、シャーペンの芯ちょうだーい。」


とことんやる気ない声でそう言ったあたしに

「寧々、顔が怖いよ。」

ヨッシーこと吉田 愛(ヨシダ チカ)はペンケースからそれを手渡してくれた。



プリントには、中途半端に書かれた名前。


“奈雲”と印されたその右横にあたしは無言で汚い字を書き足した。




奈雲 寧々(ナグモ ネネ)


無駄に画数の多い漢字の並び。
小さい頃は
覚えるのが大変だった。


だけど今じゃ
手に馴染んだその感覚。



それが
あたしの名前。