シン、と静まった帰り道に
悠はポンと俺の背中を押すと

「ま、とりあえず帰ろうぜ。」

そう言って歩き出した。



だらしなく下げられたズボンの裾を引きずって進む悠の後ろ姿。

その背中を
ただ無言のまま追い掛ける俺。



きっと悠なりに
俺に何があったのか

瞬時に察知してくれたのだろう。



そんな悠の優しさが嬉しい反面
寧々の泣き顔が脳裏に焼き付いて離れない。


そう言えば
寧々が泣くなんて、これが初めてかもしれない。


考えたら
いてもたっても居られなくなって。




「ごめん、悠…俺、」

「ん?」

「やっぱ、行くわ。」

「…おー。」


ごめんな、と言い残し

そのまま走り出した俺に
悠はバカみたいにデカイ声で叫んで来た。



「頑張れよー、色男っ!!!」

って、声デカすぎだっつーの!



そう思いつつも
押された背中が、やけに温かくて俺はふっと笑ってしまった。