あたしは、きっと
自惚れていたんだ、多分ずっと。
たくさんの中から
昴はあたしを選んでくれて。
どんなにあたしが先に帰ろうとしても
いつだって昴は追い掛けて来てくれたし
こうして欲しい、って言えば
どんな事だってあたしを優先してくれた。
それが当たり前で
それが、“彼女”ってモノだって
そう、思ってた。
だけど、そんなの
自分のエゴでしかなかったんだ。
「っ、痛、」
ジャリ、と砂が鳴いて
あたしは地面に手をついてしまう。
その時、ふと視界に入ったカバンのキーホルダー。
『何か、これ寧々に似てない?』
それは、初めてのデートの時
昴が突然くれたヒヨコのマスコット。
『似てないしっ!』
拗ねたあたしに
昴は声をあげて笑っていた。
なのに子供じみたそのマスコットですら
あたしには、宝物になって。
「…本当、どこが似てるって言うのよぉ…っ、」
砂にまみれ、泥だらけになったヒヨコが、余計に涙を誘って仕方なかった。