一瞬、何が起きたのかわからなくて。

真っ白になってゆく頭の中で
視界に映ったのは、力なくその場に倒れ込んだ寧々の姿。




プツン、と切れて
溢れたモノは、多分今までずっと抑えてた、寧々への想い。




「―――寧々っ!」


気が付けば、俺は人の間をすり抜けて寧々の元へと走り出していた。


ヨッシーが涙ぐみ、青ざめた顔で懸命に寧々へ呼び掛ける。

「寧々、寧々っ!しっかりしてよぉ!」



――早く、早く。

そう思っていても
スローモーションのように、体は動かなくて。



俺が寧々を抱き上げる前に
近くに居た男子生徒が、彼女の体を支えようとした瞬間――。



「触んなっ!!!」


ようやく寧々の元へと辿り着いた俺は、彼女を運び出そうとしてくれていた男子生徒の手を振り払った。


そして、ざわつく館内に
俺の声が響き渡る。




「寧々は俺の女だ!!!誰も触るんじゃねーよっ!」



抱き上げた寧々その肩が
すっぽりと俺の腕の中に収まる。

触れた温もりが愛しすぎて。




俺は周りの目を気にもせず
寧々の細い体を、強く抱き締めた。


もう離さない、そう思いながら。