悠くんの言葉に
あたしは慌ててそれを拾い上げた。
「ご、ごめんね!あたし…っ、」
「…奈雲、」
「ごめんなさいっ!」
そう言い残して
あたしは来た廊下を走って戻る。
もつれる足を踏み出す度に
こぼれ落ちる涙。
増してゆく、痛み。
…胸が、潰れそうだった。
『…後悔、してないんだろ?』
『……して、ないよ。』
――嘘つき。
「っ、きゃ…っ!」
急に走り出したせいか
体制が崩れ、見事に転ぶあたし。
その拍子に、鍵はあたしの手から離れて。
もがきながら掴み上げると、あたしはそれを両手に抱え
声を殺して泣いた。
――嘘つき。
後悔してない?
…そんなの、嘘だよ。
「――っ、」
きっと、悠くんも気が付いてしまっただろう。
あの言葉が、あたしの強がりだったって事。
精一杯の、虚勢だったと。
「……もぉっ、何で…っ、」
後悔、しているんだと――。