「じゃぁ、次はー」
「名にしおはば 逢坂山のさねかづら
人にしられで くるよしもがな」
突然、次の短歌を詠む声が聞こえた。
あたしの言葉を遮って、
目を見ながら。
廊下側から3番目の一番後ろの席。
間違いなく、彼の声。
「意味は、逢って寝るという名をも持っているならば、
その逢坂山のさねかずらは、たぐれば来るように
誰にも知られずにあなたを
連れ出すてだてが欲しい…
…ですよね?センセイ」
鋭い目がアタシの全身を刺さるかのように
痛い…
「この短歌っていわゆる不倫ですよね?
逢って寝る…イコールエッチだし。
誰にも知られずにイコール独り占めしたい
…ってことですよね?
昔の人も独占欲が強いわけだ」
クスクスと笑う
千昭くんは、やっぱりみんやより大人。
でも、そんな授業でエッチって。
どこまで教えたらいいのかなんて
アタシだってわかんないよぉ…。