『家族への告知は
ご自分でなされますか』

その問いかけに対して
北川さんは小さな声で
『はい』と言った

医師としては情けない
感情なのかもしれないが千穂の事が気になって
仕方がなくなっていた

この際、今回の件に
関してだけ特別だと
自分に言い聞かせて
俺は質問をしていた

『大切な人への告知は
なされるのですか?』

北川さんは驚いた様子で俺の顔を見ていた

横に居た、湯川さんも
俺に対しての表情が
何を言い出すんだ!
と言っているようだった

北川さんはしばらく
無言のままだった

物音一つしない静かな
会議室の中で、答えが
出るのをゆっくり待った

北川さんは目を閉じて
考えていた

とても長い時間のような感覚に陥っていた

ようやく目を開けて
俺の目をしっかり見て
結論を言い始めた

『今は言えません。
そんな勇気がないです。早めに言いたい気持ちは山々なんですがね。
どう話していいかも
わからなくなってます』

思った通りの結果だった

勝手な判断だとしても
俺が話しておく

千穂ならそうして
欲しいはずだから