こんな事を言っても
いいのか悩んだ末に
俺は正直に口に出した

『延命治療を行わない
という事は、そのまま
命が消えるのを待つ
という事になりますよ』

湯川がハッとした表情で俺を見返していた

北川さんは落ち着いた
表情のままでゆっくりと口を開いて言った

『わかっていますよ。
今までの罰が全部
俺にふりかかってきたと
思い込むのは間違って
いるのでしょうか。
自分の罪の大きさの
代償として今はこの罰を受け入れようと思って
いるだけなんです。
大切な人を守る事さえも出来なかった俺への
大きな罰だと思って
受け入れる覚悟です』

俺は何も言えなかった

大切な人というのが
千穂だという事が
痛いくらいに伝わった

千穂を守れなかった
自分への罰だとして
死を受け入れるだなんて

だから延命治療を拒む

ただ素直に受け入れる

それが北川さんが出した俺への答えだった

そして自分の人生への
答えでもあった

千穂がそれを受け入れるわけがないだろう

どう切り出すつもりで
いるんだろうか

きっとギリギリまで
話さないでおくつもりでいるんじゃないだろうか

そんなのは俺が許さない