俺の目をジッと見ながら事実を受け入れようと
しているのが伝ってくる

誰もが受け入れたくないその事実を静かに
受け入れている様子に
俺は驚きながらも
事実を隠す事なく
俺はゆっくりと話した

湯川という秘書の男は
青ざめた顔をして
時々頭を抱えたりして
落ち着きを欠いていた

当の本人は、こんなにも落ち着いて、冷静に
受け入れているのに

落ち着いていられる方が不思議なくらいなのかもしれないと思った

これまでの経験から
告知をした時は誰もが
冷静さを失っていて
時には振り乱して
助けてくれと懇願して
必死に訴えてくる

北川さんは全くそんな
気配さえも見せなかった

今後の治療についての
話になると、北川さんは延命治療を拒み始めた

痩せ細り、髪の毛が抜けどこの誰だかも
わからなくなるのは
絶対に嫌だと拒んだ

そういう問題じゃない

少しでも命を長くする
というその行為を拒んだ

苦しむ時間が短い方が
いいんだと言い放った

とても強い眼差しで
俺に訴えていた