時間より少しだけ早く
扉をノックする音が
会議室に響き渡った

『はい、どうぞ』

ゆっくり開いた扉から
男が2人入ってきた

その瞬間…

俺は動けなくなって
言葉も出なかった

どこまで俺の運命を
狂わせてくれるのか

なぜこんな偶然を
生んでしまうのだろうか

自分の運命を恨んだ

俺の目の前に現れたのは忘れもしないあの人

千穂が離れられない




千穂が忘れられない




千穂が求めている




あの男だった




大企業の社長だって事は千穂が入院していた時に知っていた事実だった

何で俺の前に現れて
しまうんだろう

千穂はこの事を知って
いるんだろうか

最近の様子からいって
知っているような雰囲気ではないような気がする

いくら千穂でも、こんな事実を知っていたら
平常心を保っていられるはずがないよな

千穂が愛している男は
背が俺より少し低くて
痩せ型の顔立ちの整ったとてもいい男だった

悔しいくらいに

キリッとした表情で
ジッと俺を見つめていた