千穂に何もしてやれない悔しさがこみ上げてきて下唇をグッと噛んだ

言える事は1つだけ

『待ってるから』

そう言って千穂の
吸い込まれそうな瞳を
じっと見つめていた

そして自然に…

当然かのように…

唇を重ね合わせた

とても軽く合わせた唇は柔らかくて懐かしい

軽く触れるだけの
唇とはうらはらに
とても意味のある
深いキスだったかも
しれない

嬉しくて、嬉しくて
胸が久々にドキドキした

そんな俺をよそに
千穂は笑いながら
また涙を流した

それが嬉し涙だと
信じたい

千穂の笑顔のおかげで
俺まで笑顔になれた

このまま居たら千穂を
犯してしまいそうで
俺は帰る事にした

ドアを出るまで笑顔で
手を振ってくれた千穂に背を向けて歩き出した