とても綺麗に見えた
千穂の瞳から、時々
綺麗な滴が零れ落ちる

千穂、綺麗になったな

俺の知らないうちに

千穂が遠くへ行って
しまったように思える

その分千穂はとても
綺麗になっていた

俺の知らない千穂が
たくさん居て、手を
伸ばせばどこかへ
消えてしまいそうだ
自分だけ取り残されて
自分だけ時計が止まってしまったようだった

でも今生きている現実

俺の目の前に居る千穂

紛れもない事実だ

どんなに辛くても
生きていくしかない

支えになるものを
次々と失っても…

『よく乗り越えたな』

そう言って、千穂の隣に座り直して、ゆっくり
千穂の体に手を回して
ギュッと抱きしめた

千穂の涙は勢いを増した

声を上げて泣き出す
千穂を強く抱きしめた

肩を震わせながら
涙を流して、俺の胸に
顔をうずめて泣いている千穂の柔らかい髪を
ゆっくり撫でていた

俺の胸で良ければ
いくらでも泣いてくれ

いつも部屋で
1人で泣いてるんだろ?

そんな思いをするより
俺の胸で泣いてくれ

千穂の涙は止まらない

しばらく何も言わず
部屋には千穂の
泣き声だけが響いていた