千穂が持つタバコの煙がゆっくりと揺れていた

どこか寂しげな千穂の
表情を隠すかのように

千穂の笑顔の中には
何かを抱えているようなそんな影があった

俺には何もして
やれないのかもしれない

やりきれない気持ち

俺もそんな気持ちを
隠すかのように
タバコに火をつけた

『大介、うちで話そう』

何か話したくても
言い出せないような
千穂が呟いた

断る理由もないし
店を出て、千穂の家に
向かう事にした

千穂の部屋のソファーに座って、キッチンで
コーヒーをいれている
千穂を待っていた

部屋を見渡しても
そこには男の気配さえ
感じる事はなかった

千穂はコーヒーをいれたマグカップを2つ
テーブルに置いて
床に座り込んだ

2人で少しずつ
コーヒーを飲んだ

そしてゆっくりと
千穂が口を開いた

話を聞いていくうちに
俺の全身から
血の気が引いていくのがよくわかった

思わず疑いたくなって
しまうような話

全部千穂を襲った
過去の話だった