先輩が倒れてから半日以上が過ぎた。もうすぐ日付が変わろうとしている。
でも彼は未だに意識を取り戻すことなくずっと眠り続けている。
時々口移しで飲ませる水さえも無意識で飲み込む僅かな量しか受け付けなくて殆ど唇の端から零れ落ちている。
このまま意識が戻らないのでは無いかと徐々に不安にさえなってくる。
時折苦しげに唸って救いを求める様に手を伸ばす龍也先輩。
あたしはそのたびに傍によって手を握り、額に浮ぶ汗を拭いてあげるけれど彼の夢の中まで入って助けてあげる事なんて出来なくて…ただ見つめている事しか出来ないのがとても悲しかった。
熱が高い為悪寒がするのか身体はとても熱いのにずっと寒がって震えている龍也先輩。
マンションにある毛布や布団は先輩のものしかなくて、本当にこの部屋に誰かが尋ねて来る事も無ければ泊まる事もないのだと現実を突きつけられた。
『いわゆる天涯孤独の身って奴かな?特に付き合いをしてこなかった親戚なんて何処にいるかも知らないしな。』
まるで何でもないことのようにそう言った先輩を思い出して胸が痛くなる。
その言葉を何でも無い事のように言えるようになるまでに彼はどれほどの涙を流したんだろう。
彼の心の孤独を少しでもあたしに埋めることが出来ているんだろうか。
これ以上布団をかけてあげる事も出来ないくて温めてあげる事も出来ないのならあたしに出来る事は一つだけしかないと思った。