聖良の着付けを待つ間から体がおかしくなり始めていた。

滅多に風邪など引かない俺だが今回ばかりは年末からの無理がたたっていたようだ。

おまけにあの寒空に沼に落ちてしまったのだから体調を崩さないほうが奇跡といって良いのかもしれない。

風呂から上がるときに感じた軽い目眩と嫌な予感が体調の異変の始まりだった。

聖良の膝枕で目覚めた時凄く気分が良かったが、同時に頭の奥に鈍い痛みを感じ始めていた。

自分でもヤバイなとは感じていたがこんなにも早く熱が上がってくるとは思わなかった。

寒気が走り体が震え出すのを必死に聖良に気づかれないようにいつも通りに振る舞って見せていたが聖良の家の前まで送って来るのが限界だった。

頭痛はどんどん酷くなり聖良の声すらワンワンと耳に響いて、聞かれていることにまともに答えているのかさえ分からない。

休んで行くように勧める聖良を振り切ってでも、早くここを離れなければ倒れてしまいそうだった。

聖さんが送ってくれるという声に断ろうと上を見たとき、目の前が真っ暗になった。

瞬時に倒れないように何かにしがみつこうとした時に聖良が俺を支えてくれた。

ひやりと冷たい聖良の手が俺の熱い頬に触れる。


しまった!


今聖良に触れられたら熱のあることに気づかれてしまう。

案の定聖良が息を飲み聖さんを呼ぶのが聞こえたが、もう限界だった。


意識が朦朧として寒気がどんどん酷くなる。


酷い頭痛に聖良の呼びかけも聖さんの話している事も意味を持たない音にしか聞こえない。


俺はそのまま意識を手放し真っ暗な闇の中に落ちていった。