三成が太閤をすぐに起こして話すべきかどうか苦心していた時、皆 帰ったかと太閤が口を開いた。太閤は寝たふりをして話を聞いていたのであった。三成よ わしの喪を伏したとして 隠し通すのは難しい すぐに知れ渡るわ 小細工などせず 利家殿と連携して事にあたれば大事ないと太閤。それでも三成は食い下がり、太閤が同意するように説得したが、五奉行の総意は受け入れられず三成は愕然としたが、太閤の容態が変化してることに気付き、それどころではなくなっていた。太閤は話すのにも支障をきたすようになっており、三成に最期の気力をもって話かけている様子であった。三成はすぐに医師団を呼びつけるが、効果はなかった。最期の時が近いと判断して、北政所、淀の方、秀頼、浅野長政を呼び出す事にした。太閤を取り囲むように皆が座っていた。誰一人として話すことはなく、静かに太閤を見守っていた。三成は浅野長政の隣に座っていた。長政が小声で三成に太閤の喪を伏す件の裁決の確認をしてきた。三成の意外な返事に長政は困惑し顔をしかめていた。秀頼はいつもなら寝ている時間なのでうとうとして大人しく、幼いながらも太閤の最期を悟り、じっと我慢していた。太閤の息遣いは荒々しく、体全体で呼吸し、まさに壮絶であった。