その瞬間、ピンときた。


あいつ…名前は忘れたが。


確か、祭りやら催し物がある度に、何かと俺につっかかってくるやつだ。



貴族があーだこーだと、毎回ぐちぐち言ってた。


軽くあしらったけど。



そいつが今、メイを抱き寄せた。


抵抗するメイを物ともせず、顎を持ち上げたのがわかった。



―――待てよ。


ふざけんなッ!!



あと少し、あと少しで追いつくから。


待ってろ、メイ…!



「レオ―――ッ!!」



「メイッ!!」



俺は渾身の力を振り絞り、男を殴り飛ばした。


久しぶりの全力疾走のせいで、呼吸が乱れる。


息を弾ませながら、俺はメイを振り返った。


「メイッ!! 平気か!?」