それなのに、嫌でも視界に映る、悪魔的微笑み。
「助けた礼、忘れてる」
「………」
あたしは必死にレオを見ないように前だけを見つめる。
尚も食い下がってあたしにお礼を言わせようとするレオ。
その顔をひっぱたいてやりたい衝動を抑え、あたしは投げやりに呟いた。
「…はいはい、ありがと!」
「うわ、感情こもってねぇ」
そこからどうやって部屋に戻ったのか覚えてない。
布団にくるまりながら、ただあたしはある感情を捨てようと格闘していた。
…レオが王子様なわけ、ない。
あたしの王子様は人間だもん。
だから、かっこいいとか…思っちゃダメ。
好きになっちゃ…ダメ。
そんなことを考えながら、あたしは深い眠りに落ちた。