急に、腕に激痛が走る。


片腕がレオにつかまれていた。


「…痛っ、放して…」


「あの時、お前は拒まなかった」


…あのとき。


ベランダで出会ったときの話?


「お前が選んだんだ」


視界が、揺れる。



―――泣くな。



騙されたって言えば、それで終わりだけど。


深く考えずについて来たあたしも、相当バカだった。


「レオは…」


あたしがポツリと呟くと、レオはあたしの腕をつかむ力を緩めた。


あたしは、彼の紅い瞳を捉える。



「レオは、好きでもない人と結婚出来るの?」



沈黙が訪れた。


あたしはレオから目をそらさなかったし、レオもまた同じだった。


…ただ黙って、見つめ合う。



不意に、違和感を覚えた、その時。


「…レオ様」


静寂を破ったのは、ロゼの声だった。