少女が魔界に来てから10年が経った頃。


貴族との間に、一人の赤子を授かった。



その赤子の瞳は、母親の蒼い瞳を受け継いでいた。


魔族たちは、新たな可能性を秘めた赤子の誕生を、心から祝福した。



…ところが、数日後。



貴族の男は、自分が犯した過ちに気づいてしまった。


男は、魔族と人間が結ばれるべきではないと、強く後悔した。


そもそも、住むべき場所からして、違うのだと。



散々迷った挙げ句、男はある結論に達した。



―――妻と子を、人間界へ。



それは、妻と子を愛していたからこそ、導いた結論だった。


魔界では、いつ何が起こるかわからない。


人間界の方が安全だ、と。



運が良いのか悪いのか、ちょうどその日は10年に一度、魔界と人間界がつながる日。



月が紅く染まる日だった。