…―――時は、170年前に遡る。
魔界では、薔薇が平和の象徴とされていた。
理由はわからない。
ただ、みんな当たり前のように一家で薔薇を育てていた。
当時から、薔薇と言えば燃えるような真紅。
それ故、紅い瞳をもつ者は敬われ、その存在が平和の象徴とされた。
いつしか、紅い瞳をもつ者は、貴族と呼ばれるようになった。
そんな魔界に、ある日突然信じられない出来事が起こった。
一人の人間の少女が、魔界へと迷い込んでしまった。
十年に一度、魔界と人間界はつながる。
時空の歪みは、当然出来てしまう。
けれど、意図的に人間界に移動出来る魔族と違って、人間が魔界に迷い込むなど例外だった。
それだけでも十分珍しい出来事だったのに、さらにその少女は…
…蒼い瞳を、もっていた。