大好きだった。
…ううん。
今でも大好き。
こんなに好きなのに…どうしてこうなったんだろう。
立ち上がると、胸元のネックレスが揺れた。
紅―――…
「………やだ」
何で涙が出てくるの?
帰るって決めたのは、あたし。
なのに…どうしようもなく苦しい。
「―――レオ…」
あの意地悪な態度も。
あの意地悪な笑顔も。
…全部大好きなのに。
キィ、と軋んだ音を立てて、部屋の扉が開く。
驚いたあたしが振り返ると、そこには。
「おはよう、芽依」
「…っ、お母さん…!? 」
海外へ旅行中のはずの、お母さんの姿があった。
いるはずのないお母さんの登場に、あたしは涙が引っ込んでしまった。