―――人間界。
「………」
ぼんやりと目を覚ますと、差し込む朝日が体に染み込む。
覚醒しきらない脳のせいで、頭がくらくらする。
ここは―――…
「―――っ!」
勢いよく体を起こすと、目の前には開け放たれた窓。
心地よい風が、カーテンを優しく揺らしている。
そして手のひらに伝わる、カーペットの感触。
間違いない。
ここは…あたしの部屋、だ。
「帰って…きた…?」
人間界に、もとの世界に。
あたし…
帰ってきたんだ。
嬉しさと同時に、込み上げてくる悲しさ。
…愛しいあのひとには、もう会えない。
笑い合ったあの日々は過去になり、思い出に変わる。
記憶の欠片に…なってしまう。