目が点の俺に、親父は眉をひそめる。


「何で驚くんだよ。当たり前だろ?」


「…あ、当たり前なわけねぇだろ!俺にはまだ早すぎる!」


そもそも、俺は魔王の器じゃない。


魔界の為になんか、生きていけない。


俺は、メイの為に生きるんだ。



抗議する俺を、親父は片手で遮った。


こういうときに限って、貴族らしさが出るのがムカつく。


「歳は関係ない。俺が決めた。お前が魔王だ」


「………っ」


明日。


明日、親父が魔王を辞める。


そして…俺が魔王になる。



いきなりの展開に、俺はただ呆然とするばかりだった。



「―――レオ」



俺の名前を呼ぶその表情は、魔王のときの顔。


…真剣なときの、顔。



親父のこの姿に、俺は憧れてたっけ。


そんなことをぼんやりと思った。