あたしは、幸せ者だ。


すぐ近くに、背中を押してくれるひとがいる。



…なのに。


あたしはここで、足踏みしてるだけでいいの?



一歩を踏み出さなくていいの?



「…あたし、レオに会いたい」



大好きなひと。


いつの間にか、大きくなっていた気持ち。



「あたしの気持ちを、伝えたい」



踏み出さなきゃ。


その先が安全か危険かなんて、踏み出してみなくちゃわからないんだから。


「…それでこそ、メイさんですわ」


ふふ、と笑うマレッタにつられて、あたしも笑顔になった。


本当にありがとう、マレッタ。


「マレッタ、レオは―――…」


レオの居場所を訊こうとしたあたしは、途中で言葉を区切った。



―――コンコン



その微かな音が、耳に届いたから。