「そんな呼び方はやめてくれよ。マオでいいよ」


「じゃあ…マオさん」


呼び捨てなんて出来るはずもなく、あたしが"さん"付けで呼ぶと、マオさんは笑った。


「面白いねー、君。…で、何かな」


悪戯に笑うその表情は、レオにそっくり。


あたしの訊きたいことなんて、きっとこの人にはわかってるはずなのに。


「…永遠に結ばれないって話、詳しく教えて下さい」


それでもあたしは、訊ねる他になかった。


「…いいよ。話すつもりだったから」


扉に背中を預けたまま、マオさんは腕を組んで答えた。


「俺の兄さんが、"薔薇姫"を人間界へ帰し、罪を問われた。そして追放された。…ここまでは、いいね」


ちらりと向けられた視線に怯えながらも、あたしは小さく頷いた。


「残された貴族は避けられ、特に同じ血筋の者たちは酷い扱いを受けた」