レオがピクリと反応するのと同時に、魔王さまはレオへと素早く近づいていった。
レオの目の前で足を止め、魔王さま真紅の瞳をすうっと細めた。
「…あの子を連れてきたのは?」
「………」
その声は、さっきまでのおどけたような声とは全然違う。
相手を射竦めるような、低い低い、地を這うような声音。
あたしは、思わず身震いした。
「…レオ、答えなさい」
沈黙を通していたレオに、魔王さまは冷たく言い放った。
レオは目を合わせずに、足元を見て答えた。
「……俺だよ」
途端。
響き渡る鈍い音と共に、地面に倒れ込むレオ。
…殴られた?
レオが、…魔王さまに。
「…お前は…どういうつもりなんだ」
声を振り絞ったように訊ねる魔王さまは、レオを殴った拳をきつく握っていた。