こっちを振り返った魔王さまの表情は、あたしを見た瞬間に強張った。
「………?」
それは、"驚愕"の表情じゃない。
―――"恐怖"だ。
何でそんな顔をされるのか、あたしは少し遅れて気がついた。
魔王さまのお兄さんが、あたしのお母さんの恋人。
お母さんを人間界へ還したから、お兄さんは追放され、同じ血筋の者は忌み嫌われた。
魔王さまにとって、あたしのお母さん…"薔薇姫"は、元凶なんだ。
他の魔族には幸運の証だとされていても、魔王さまからしてみれば、蒼い瞳は…
―――恐怖の証、なんだ。
「…蒼い…瞳…?君は、もしや…」
どうしよう、何か…
何か言わなきゃ…!
「…あ、あのっ…」
「―――レオ!」
あたしの言葉を遮って、魔王さまがレオの名前を呼んだ。