「…すみません。困らせるつもりはありませんでした」
ロゼの申し訳なさそうな声音に、あたしは伏せていた顔を上げた。
それと同時に。
「メイ様。貴女は"薔薇姫の子"です」
力強い眼差しで、力強い言葉で、ロゼはあたしに向けて言った。
…それでも、一抹の不安を拭いきれないあたしは、黙ったままロゼを見る。
そんなあたしの気持ちを感じ取ったのか、ロゼが再び口を開いた。
「…メイ様は今まで、無意識のうちに魔族の文字を読んでいたでしょう」
「………あ」
この時あたしは、レオと買い物に出かけた日のことを思い出した。
あとで訊ねようと思ってたのに、すっかり忘れてた。
「それに、魔族の言葉も普通に理解し、喋っておられます」
「…えっ!?」
ロゼの言葉に、あたしは耳を疑った。