メイは頷くと、おもむろに遠くを指差した。
「例えば、あっち。あたしはよく魔界を知らないから、あそこに大きな湖があるんだー、とか」
次に指差したのは、昼間訪れた商店街。
「商店街は、夜は綺麗にライトアップされるんだー、とかね。知らない発見が沢山出来る」
…もし、今日が新月だったら。
…もし、魔界の夜に明かりがなかったから。
メイの笑顔が見えることはないし、抱きしめたい衝動に駆られることは、なかったかもしれない。
その衝動を抑えるのに、俺がどれだけ苦労することか。
「…俺は、ここら辺は知り尽くしてるからな」
「あはは、だよね」
何とか振り絞った声は、自分でも情けないと思う声音。
でもメイは気づかずに、あどけない笑顔を向ける。