俺は空を見上げると、ため息をついた。


「…天気がいい日はさ、超眺めがいいんだよ」


初めてこの場所で空を見上げた時、体中が震えたのを憶えてる。


空一面に散りばめられた星たちに、淡い光を放つ満月。


時間が経つのも忘れ、その光景ただ見惚れていた。



その日から、ここは俺の特等席。

何かあれば、ここに来ては空を仰いだ。


「…残念。今日は曇り空だね」


メイも空を見上げ、肩をすくめた。


そう、今日は曇り。


星はうっすらとしか見えないし、月は霞んでしまっている。


ムードも何もない。


「あ―――…。やっぱ今日やめればよかったな」


頭をかきながらそう言うと、メイは笑った。


「何で?他の楽しみ方もあるじゃない」


「…他の楽しみ方?」


メイの言葉に、俺は眉をひそめた。