私達が宿泊する施設に到着した。
バスから降りると、そこにはまーちゃんの姿があった。
まーちゃんは佐藤先生と2人で資料を眺めながら、何やら話し込んでいた。
「まーちゃんのばか」
小さな声で呟くと、千夏は私のことをかわいいと言ってからかった。
まーちゃんは私が横を通り過ぎても気付かない。
「あ!おい!美春。さっきはコロッケサンキューな」
佐藤先生の視線が恐い。
でも、嬉しかった。
人がいっぱいいるのに『美春』って呼んでくれたこと、一生忘れないよ。
「コロッケ泥棒・・・ 覚えてなよ」
ちらっとまーちゃんをにらんだつもりだったのに、嬉しくてつい笑顔になってしまった。
まーちゃんの隣にいる佐藤先生は、わざとらしく笑顔を作って私を見ていた。
余裕ぶってばっかみたい。
悔しいなら悔しい顔しなよ。
それとも、私なんてライバルにもならない?
佐藤先生は、まーちゃんが好きなんだ。
生徒の間でもそんな噂が立っていた。
本当かどうかはわからない。