「これうまい!
うん、新しい味!」
アキはすべてに一通り箸をつけたあとそう言った。
どうやら天使の口にも人間の味は合うみたいだ。
逆は絶対にありえないなけれど。
「よかったね」
「うん、このお礼に明日の朝は僕が」
「それはやめて」
出会った初日にしてあたしはアキの突っ込み係になりそうだ。
それでも尚、自分のペースではなくアキにペースを握られている感じがする。
なんとなく、だけど。
「美味しいって言ってるのに」
アキは子供のように頬を膨らませてむくれた。
「だったらひとりで食べて」
あたしはそんなアキには構わず冷静に応答を繰り返す。
まるで子供と大人。
きっと足して2で割れば、あたしたち年相応になると思う。
「じゃあ僕はあとでとっておきのことしてあげるよ!」
天使はこれ以上ないってくらいの笑顔を浮かべて言った。
とっておきのこと。
天使の言う『とっておき』は人間にとってもとっておきになるのだろうか。
激しく疑問を感じる。
「まぁ確信は持てないんだけどね、聞いたわけじゃないから」
「…ふーん」
気になるけど、実行して欲しくはない。
でもなんといっても止められないのはもうわかっていたから止めることはしなかった。