だけど、トウマさんの答えはイエスでもノーでも無かった。

「…やめとけ。お前は、また悩むことになるよ。」

「えっ?」

言ってる意味がわからなくて、私はその時初めてトウマさんの顔を見た。

トウマさんは…ひどく悲しそうで…とても辛そうで…。

言ってはいけなかったのか、とすぐに後悔した。

「あの…悩むって…?」

「…恋か、友情か。」

「……?」

転がった最後のものを段ボールに入れ終えて、トウマさんは立ち上がった。

「ま、週明け頼むわ。」

「あっ…。はい…。」

今度こそ私に背を向けて、トウマさんは立ち去ってしまった。

私はトウマさんが行ってしまった後をじっと見つめていた。

…断られたわけじゃ…無いんだよね?

でも…恋と友情で悩むってどういうことだろう…。

答えは週明けにわかる、と自分に言い聞かせて段ボールを手に持ち私は再び倉庫へ歩き出した。

秋 8章に続く
閉祭式は、学校祭のお約束のキャンプファイヤーで締める。

宿泊研修の時は色々あって咲希と二人だったけど…。今回は4人で楽しもうと話していた。

「あっ、ハナ!西原!」

人がたくさんいる中で、なんとか咲希達を見つけた。

といっても…みんな体育着なりジャージなりを着てるのに、やっぱり一人だけ制服の咲希を見つけるのはさして難しいことじゃ無かったけど。

「実行委員お疲れ様。仕事はもういいの?」

「うん。もう大丈夫!はぁ…疲れたね!」

終わったんだ。
大変で、めんどくさいなあと何度も思ったけど、終わってみれば少し寂しい気もする。

点火まではまだ少しあるようだったので、今日の咲希について4人で盛り上がった。

「咲希、そう言えば…良かったよ。けじめ。」

「そう?嬉しいな、ハナにそう言ってもらえて。」

「姫、俺は!?」

「はいはい、颯大もありがとう。すっごい大きい声出すからびっくりしたわよ。」

「いや、姫に伝えたかったからさ!」

この様子…。颯大、告白してないな。

私と西原くんは顔を見合わせて苦笑した。

「何笑ってるのよ。」

「いや、颯大結局神田に…。」

「ちょっ!純也、ちょっとこいや。男二人で話そうぜー?」

と言って、強引に私達から少し離れた場所に移動した。

ああ、弁解してるんだろうな…。

「ハナ…。」

「ん?」

咲希は、いつものように明るい笑顔で私を見て、不意に手を握ってきた。

「あのさ、これが私なりのけじめなんだ。…みんなはわかってくれなかったかもしれないけど…ハナさえわかってくれればいいかな、って。」

「うん…。咲希の想いは、私にはちゃんと伝わったから。」

咲希なりのけじめ。

制服姫であることが、「神田咲希」そのものであると、咲希は真摯に訴えた。

その力強い訴えは、私の心にしっかりと伝わったよ。

咲希は一層私の手を強く握った。
私も握り返す。

その時、わあっと歓声がし、火が点火された。

空高く火は昇っていく。

そしてフォークダンスの音が流出す。
これは宿泊研修の時みたいにみんなで踊るのじゃなくて、ちゃんとペアで踊るやつだ。

今まで西原くんと話していた颯大がすっ飛んできて、咲希に手を差し延べた。