もう一人の天才、雨宮鏡子は高校入学前に引っ越してきた。

ふらっと、どこかに居なくなっていた時期もあったが、この時期になってようやく落ち着いたようだった。

雨宮の一族。

翔吾に詳細は知らされていなかったが、いろいろあるようだ。

新学期が始った時。

晴れて高校生になった喜びよりも、また3人で過ごせる喜びの方が大きかった。

「よう。」

雨宮鏡子は綺麗な顔をしている。

どうやら神は天才がお気に入りらしい。

「あ、ひさしぶりです。翔吾くん。」

鏡子は昔から、劇団に身を置いていた。

その端整な顔立ちや、大人顔負けの演技力から、幼い頃の鏡子は周りの大人たちから「神をも騙す名女優」やら「億の仮面」やらと呼ばれていたのを思い出す。

「元気そうでなによりですね。昔からずっと病院にいた翔吾くんだから、またどこか怪我してないか心配でした。」

「あー、心配かけた…」

「あはは。心配するのが私の趣味です。」

鏡子はそう言って翔吾に微笑んだ。