「なあ、翔吾。俺の家でバースデイ・パーティーがあるんだ。」

これまでの翔吾の人生で、何かの始りはすべて流一が持ってきた。

翔吾にとっての流一とは、幼い頃からの親友であり、翔吾がこの世の中でもっとも尊敬する人物のうちの一人なのだ。

流一を一言で表現するならば、それは「天才」。

その知能、その財力、その人望、すべてがエリートだった。

そんな流一とずっと親友でいられることが翔吾の誇りでもある反面、天才と過ごし、天才と共に成長した自分が、「何をみても流一を基準においてしまう」という翔吾の弱点を生み出してしまったことを災難にも思っていた。

その天才を見続けた目で自分の姿を見ると、翔吾は自分が情けなく思えてもくる。

「もちろん来てくれるよな。鏡子も誘ったからさ。」

携帯電話特有のノイズが混ざった音声で、流一はそう伝えた。

翔吾に弱点を与えたもう一人の人物は、この雨宮鏡子。

雨宮流一の親戚にして、流一に引けをとらないほどの天才。

翔吾がどんな才能を手に入れたところで、この二人はその才能を生まれたときから標準装備しているのだと、諦めに似た感情を翔吾は常に持っている。

ただ、そんな二人のそばにいる事は翔吾にとって幸せだった。

嫌だと思った事は一度だってない。

「ああ、もちろんだ。」

翔吾はすぐに返事をした。