次の日。

奈良駅前で…あたしは、信じられない事実に頭を抱えた。

「もお〜帰るの!」



「当たり前だ!二泊三日だから」

顔に包帯を巻いた熊五郎が、帰り支度をしながら、

「今回は、災難続きで…早く帰りたいよお〜」

本音を漏らした。


「だって!あたしは、何もしてないよ!奈良に来たのに、鹿と戯れていないし!鹿せんべいもあげてないよお!」

嘆くあたしの肩に、蒔絵が手を置いた。

「安心しろ…鹿せんべいは、食えたものじゃない」

蒔絵の言葉に、夏希は呆れた。

「当たり前じゃない〜」

だけど!

「まじなの!」

あたしは驚き、蒔絵の顔を見た。

「まじだ!」

蒔絵は、お好み焼きをパクつきながら、力強く頷いた。





奈良から京都に出て、新幹線に乗り込んだ大月学園一行は、関西を後にする。


新幹線の窓際に座り、ぼおっと遠ざかっていく町並みを見つめながら、理香子の瞳から無意識に、涙が流れた。

行きは、隣にいた楓が…帰りはいない。


広陵学園も、修学旅行に来ていたらしく…楓は彼らと同流した。


昨日の戦いの後、眼鏡を外し、プラチナから理香子に戻ると、

乙女ケースを投げ捨てようとした。

しかし、早奈英を抱き抱えていた九鬼に止められた。

そして、九鬼の口から、乙女ソルジャーやガーディアン…そして、闇のことを教えられた。


その晩に泊まる旅館に入っても、理香子は九鬼の話を信じられなかった。

1人になった部屋で、理香子が崩れ落ちた時、

テーブルの上に、楓の置き手紙があることに気づいた。

どうやら、楓が先に来たようだ。


理香子は、その手紙ですべてを知った。

中島の家は、闇の女神と言われる平城山加奈子の親戚であり、

家族共々…ダークメイトに参加することになってしまった。

それは、中島自身も例外ではない。

そして…広陵学園も、ダークメイトの手に落ちたことを…。