「中島!待って!あたしも!」

中島に走り寄ろうとした理香子の前に、三人の女が飛んで来て、道を塞いだ。

「この人達は!?」

前に立ち塞がる三人を、理香子は知っていた。


「久し振りね。理香子さん」

そして、三人の後ろから、現れた人物に、理香子は仰天した。

「お姉さん?」

中島の姉であり、演劇部の部長である紅美子がいるなんて、予想外であった。

道を塞ぐ三人も、演劇部の部員である。

「話は、考えてくれたかしら?」

微笑みながら、きいてくる紅美子の質問に、理香子は眉を寄せた。

「え?」

「一応考えましたけど…」

理香子の後ろから、楓が前に出た。

「あなたなら…あたし達の幹部になれるわ」

「そうですね…」

紅美子は、理香子ではなく…楓に話しかけていた。

「か、楓?」

理香子は、楓の手を掴もうとしたが、

楓はそれを拒んだ。


「か、楓?」

戸惑う理香子に、楓は体を向けると、微笑んだ。

「理香子…いえ…」

楓はゆっくりと首を横に振った後、理香子を見つめ、

「乙女プラチナ」


「お、乙女…プラチナ!?」

楓に言われて、理香子は自分の姿に気づいた。

先程は、中島がそばにいた為、どきどきして自分の体のことなんて、見る余裕がなかったのだ。

改めて見てみると、眩しい戦闘服を着ているし…眼鏡までかけていた。

視力がいいのに。


「さっき…あんたが、中島を助けようと飛び込んだ時…あんたを助けようと、どこからか、眼鏡が飛んできたわ」

「え!」

自分では、まったく気がつかなかった。


「乙女プラチナの適合者となり…我らを裏切りし、あなたに…弟をあげる訳にはいかないわ」

紅美子は腕を組み、理香子を軽く睨んだ。

「え?」

理香子には、意味がわからない。



「理香子…。あたしは…あんたと違って、居場所が少ないからさ」

楓は悲しく微笑むと、ぽかんとしている理香子に手を振り、

「じゃあね!理香子!」

あっさりと、紅美子のもとへ歩き出した。