「おい!九鬼!」

人混みを掻き分けて、流れを逆走する九鬼の耳元に、

加奈子の声が聞こえた。

「頑張れ!」



「クソ!」

九鬼は、加奈子の声を無視して、走った。




「装着!」

青の乙女ケースをかざして、夏希が乙女ブルーに変身した。

「おいでやす!おいでやす!」

湯豆腐の入ったタイツを振り回して、下っぱがブルーに襲いかかる。

「乙女スプレー!」

催涙ガスが、辺りに立ち込める。逃げ遅れた一般人も苦しみ出す。

「あっ!ごめんなさい!」

ブルーは空になった乙女スプレーを、下っぱに投げつけると、乙女スタンガンを召喚した。

「うりゃあ!」

スタンガンを構えながら、魔神湯豆腐に向かっていった。



「装着!」

九鬼は乙女ケースを取り出したが、眼鏡が飛び出さない。

「充電はしたはずだ」


九鬼は変身を諦めると、左足を軸にして回転すると、回し蹴りを人々を襲うマイコーに叩き込んだ。

「変身できなくても」

九鬼は構えた。

人々を襲っていたマイコーが、一斉に九鬼に向かってくる。


「きゃ!」

湯豆腐を顔にぶつけられ、眼鏡が豆腐まみれになった夏希が、尻餅をついた。

「ははは!とどめだ!」

魔神湯豆腐は、体を千切ると、また投げようとしたが、

「熱!」

思わず、湯豆腐を落としてしまった。




「えい!」

九鬼の膝が、マイコーの顔面に決まった。

崩れ落ちるマイコー。

「きりがない!」

マイコー達は、もとは一般人である。

あまり手荒な真似はできない。

「黒タイツを倒さないと」

辺りを探る目が、粉を撒いている下っぱを見つけた。

「そこか!」

九鬼は、気を失ったマイコー達を飛び越えると、下っぱのもとへ走り寄る。

しかし、その前に加奈子がいた。