「ほお」

感心したように頷くと、プラチナは2人の乙女ブラックに、体を向けた。そして、にやりと笑うと、

「たかが、クズが2人になっただけで!何ができるか!」

また両手を広げた。


「とお!」

2人のブラックが、ジャンプした。

「ダブルブラック!キック!」



「また!アホの一つ覚えの蹴りか!」

胸板をさらけ出し、蹴りを受け止めようとする。

「効くかあ!」

笑うプラチナに蹴りが決まる瞬間、ブラックは九鬼に戻った。

「九鬼!」

ブルーが叫んだ。

誰もが、九鬼の変身が解けたと思った。

九鬼は叫んだ。

「乙女ブラック!ファイナルキック!」

九鬼の右足が、太陽のように輝いた。

よく見ると、九鬼の右足の先だけが、ブラックのままだった。

乙女ブラックの力そのものを、敵に喰らわす。

乙女ソルジャー最後の技。

生身をさらす為、技を放つことさえ危険な技。




「馬鹿な…」

2つの蹴りを喰らった瞬間、プラチナはふっ飛んだ。


中に舞う…2つの影。

一つは虚空に消え、

もう一つは芝生に転がると、


初老の男に変わった。


「そ、そんな…あり得ない!乙女ガーディアンの私が!」

狼狽える男の顔を見たとき、ブルーは絶句した。

「き、教頭!?」



苦労してきたか…鮮やかな白髪に、鮃のように目が離れた顔をした教頭は、あるものがないことに、気づいた。

「眼鏡がない!乙女ガーディアンの眼鏡が!力が!」


芝生に膝をつけ、眼鏡を探す教頭の後ろに、誰かが立った。

「探しても…無理ですよ」

その声に、はっとした教頭が振り返り、顔を見上げた。

「結城先生!一緒に探してくれたまえ!私の眼鏡が…ない…」

立ち上がり、哲也にすがりつこうとした教頭の背中から、血が噴き出した。

「え?」

教頭は、自分に起こったことがわからなかった。

哲也は、教頭に笑いかけ、

「あなたは…乙女ガーディアンの資格を失った…」