「月よ…あたしに、力を!」

九鬼は、乙女ケースを握り締めた。

「これが、最後でも構わないから!」

姿を見せたばかりの月の光に照らされて、九鬼の願いが叶ったのか…乙女ブラックへと変身した。

「来い!その中途半端な力でな!」

乙女プラチナは悠然と、両手を広げた。



(いつまで、変身できるか…わからない!)

九鬼は走りながら、短期戦を挑むことに決めた。

「ルナティックキック零式!」

ジヤンプしたブラックの蹴りを、プラチナは胸板で受け止めた。

ブラックはキックが決まると同時に、回転し、地面に両手をつけると、逆立ちの格好で足を曲げ、

そして、プラチナの顎目掛けて、足を突き上げた。

「ルナティックキック二式!」

しかし、プラチナの顎が少し上に上がっただけだ。

ブラックは、バク転をすると、今度は飛び上がり、

「ルナティックキック三式!」

爪先を軸にして、駒の如く回転した。

「舐めるな!」

二の腕で、三式を受け止めたプラチナは、片手だけでブラックをはね飛ばした。

ブラックの体が、中に舞う。

まだ真上に来ていない月を背に受けて、ブラックはプラチナの頭上に飛翔する。

「ルナティックキック四式!」

右足を月に向け、ムーンエナジーを補給する。

「別名!月影キック!」

重力を利用した直下型の蹴り!

月影キックが、プラチナの頭の上に突き刺さる。




「な、何!?」

ブラックは絶句した。

「舐めるなと言っている」

顔を上げたプラチナは額で、月影キックを受け止めていた。

プラチナのムーンエナジーが、ブラックの足に絡みつく。

「フン!」

気合いだけで、吹き飛ばされたブラックの体が、中に舞う。

「プラチナボンバー!」

「乙女バリア!」

とっさに、ムーンエナジーで盾を作るが、プラチナから放たれ衝撃波は、バリアを突き破り、ブラックの体を直撃した。

受け身すら取れない形で、ブラックは奈良公園の芝生に激突した。

地面が吹き飛び…クレーターのような穴ができ、

その中で、ブラックは九鬼に戻っていた。