「というわけで、結城は来てないのか」

熊五郎は、ため息とともに、出席簿を閉じた。

ここは、新幹線の中。


五月雨夏希や花町蒔絵は、車内にいた。

「今回は、引率の先生が少ないから、特別に生徒会長に参加して貰っているというのにな」


熊五郎の横には、九鬼と…平城山加奈子がいた。

「突然、事故で亡くなった副会長の代わりに、平城山さんも参加してくれた!みんな!先輩達の言うことをきくようにな」


熊五郎を挟んで、平然と立つ加奈子を見て、

夏希が、隣に座る蒔絵を肘で突っついた。

「裏切り者が、よくもまあ〜しゃしゃと」

声を潜めて呟く夏希を見ずに、蒔絵は携帯をいじりながら、

「うざい」

とだけ言った。



「各自、車内では静かにすること!」

熊五郎が一番前に座ると、その横に加奈子が座った。

九鬼は無言で、通路を挟んで、隣の座席に座った。


窓側には、1人の生徒が座っていた。

「ご迷惑をかけます。生徒会長」

九鬼に向かって、頭を下げたのは、牧野早奈英。

早奈英は足が悪く、普段は車椅子で移動していた。

だけど、少しは歩けるので、みんなといっしょの車内にいた。

「いいのよ」

九鬼は微笑んだ。

今回、九鬼が引率で参加した理由のは、早奈英の面倒を見ることも含まれていた。

それから、九鬼は無言になった。

通路の向こうにいる加奈子を気にしながらも、決して隣を向くことはなかった。

その空気を察して、早奈英も口をつむんだ。




新幹線は、そんな者達を乗せて、京都を目指していた。