「やれ!」

立ち上がった鹿の号令で、一斉に下っぱ達が襲いかかる。

その手に、お土産に大人気の木刀が握られていた。

お陰で、近所のお土産屋さんでは、売り切れだ。

その時、大仏殿に到着した熊五郎は、二本足で立つ鹿に驚愕した。

「し、鹿男!」

その呼び方に、キレた鹿の正拳突きが、熊五郎の顔面を炸裂した。

「失礼ね!あたしは、鹿女よ」

気絶した熊五郎を残して、鹿は九鬼達に向かって、突進してくる。

「お前達、人間に言いたい!いい加減、鹿せんべいに変わるものを作れ!鹿ワッフルかと、作れるだろが!」


九鬼は、車椅子を背にして構えた。

「できないなら、チョコ味とかつくれ!」

メスと言ってるのに、角が生えてきた鹿女。

「ハリケーン!ミクシー!」

何かが、間違っているネーミングで、角を突きだして、向かってくる。

「生徒会長!」

九鬼の後ろで、早奈英が叫んだ。

「あたし!これ以上!守られているだけなんて、嫌です!」

「早奈英さん!?」

早奈英は、乙女ケースを突きだした。

「装着!」

車椅子から飛び出した乙女シルバーは、九鬼を飛び越えると、鹿女の角の間に、蹴りを入れた。

「きゃあ!天然記念物に!」

ぶっ飛ぶ鹿女。

「早奈英さん!」

「はっ!」

乙女シルバーは、鹿女に向かって走り出した。

その後を追おうとする九鬼の前に、下っぱ達が立ち塞がる。

「死ね!」

下っぱの振り上げた木刀を、九鬼は体を横にするだけで避けると、首に手刀を差し込んだ。

「う」

気を失った下っぱから、木刀を奪うと、じろりと周りを威嚇した。

その目の鋭さに、下っぱが怯んだ瞬間、九鬼は下っぱの群れに突進した。