「自由行動か…」

九鬼は、早奈英を車椅子に乗せながら、

「そちらの方が、有難い」

呟いた。

敵は、あたし達を狙ってくるだろう。

それに…加奈子に、早奈英の正体がばれてしまった。

「九鬼さん?どこにいかれますか?」

九鬼の横に、蘭花が来た。

「そうですね。あたしは、引率者ですから、皆さんの行きたいところを案内しますわ」

九鬼は笑顔で、こたえた。

「そうですか…」

蘭花は腕を組み、九鬼に背を向けて、少し考え込むと、

「奈良って…確か…かぐや姫伝説の発祥の地ですよね」

また九鬼の顔を見た。

「ええ…でも、ここからは遠いですけど…」

「広陵の地でしたね」

妖しく微笑む蘭花のそばん理香子と楓達が、通った。

「確か…姉妹校の名前も、広陵…」

「…」

九鬼は、探るような蘭花の瞳に、気付いた。

「偶然かしら?」

クスッと笑った蘭花の印象に、九鬼は危険なものを感じた。

「まさか…」

九鬼は、車椅子を背にすると、蘭花を睨んだ。

「ダークメイトか」

「違うわよ」

すぐに否定すると、蘭花は肩をすくめ、

「まさか…あなたのような偽者に、ダークメイト呼ばあにされるなんてね」

「何?」

凄む九鬼に、蘭花はあるものを見せた。

「そ、それは!」

唖然とする九鬼の目の前に、黒い乙女ケースがあった。

「あたしの偽者が、真の乙女ブラックであるあたしを、ダークメイトと言うの?」

蘭花は嘲るように、笑った。

絶句して、何も言えなくなる九鬼に、

「乙女ケースに、選ばれた…あたし達戦士と違い、あなたは部外者。だけど、今までのあなたの功績は、評価してるわ」

「…」

九鬼は、拳を握り締めていた。体の震えが止まらない。

「それに…あなたはもう、変身できない。だから、もう…あたし達に任せて、もう引退したら、どうですか?」