「す、すいません!」

九鬼の声に気付き、夏希は恥ずかしさから慌て出した。

「夏希!」

飛び出して来た九鬼は、2つの乙女ケースを持っていた。

「九鬼!ど、どうしたの?」

白々しく、九鬼に駆け寄った夏希に呆れ、

「あなたの帰りが、遅いから…」

「ご、ごめん、ごめん」


「うん?」

九鬼は、夏希のそばにいる中島に気づいた。

中島は微笑むと、頭を下げた。

九鬼も頭を下げた。

「さあさあ!部屋に戻って!」

照れた夏希は九鬼の背中を押して、無理矢理旅館の方へ戻す。

門を潜る前に、夏希は中島に手を振った。

中島も手を振り返す。


夏希は気付いてなかった。

中島は、九鬼が現れてから、その手にあった乙女ケースをじっと見つめていたことに……。




「遅い!」

蒔絵は携帯から、目を離さずに、文句を言った。

「ご、ごめん」

夏希は謝りながら、コーラを蒔絵に渡した。

蒔絵がコーラを受け取り、蓋を開けると、


コーラは噴き出した。

コーラまみれになる蒔絵の顔に、眼鏡がかかると、乙女グリーンに変身と同時に、乙女ビームが発射された。

「ご、ごめんなさい!」

乙女ビームは、開いていた窓から、月に向かって放たれた。




その光を見つめながら、背を向けて歩きだした中島と、入れ違うように、理香子が旅館から出てきた。


「花火?」

ビームに気を取られた理香子は、中島の後ろ姿に気付かなかった。


理香子は首を捻りながら、自動販売機に向かう。

魔神自動販売機の前に立って、じっと見つめてから、

「ろくなものがないわね」

理香子は、さらに向こうの自動販売機に走った。