「早奈英さん!」

九鬼は、乙女ケースを握りしめ、

「装着」

と叫んだが、ケースは開かない。


「こ、こいつは…」

どどめ色は肩で息をしているシルバーを見下ろし、

「面白い」

口許を緩めた。

そして、膝をついているシルバーを蹴りあげた。

「まさか、そんなところで乙女ガーディアンの力が、手に入るとはな!」

大笑いすると、倒れたシルバーに向かって、手を伸ばした。

「早奈英さん!」

変身をあきらめた九鬼はジャンプすると、シルバーを飛び越え、どどめ色に膝をいれようとした。

「邪魔だ!」

どどめ色が右手を払っただけで、九鬼は吹っ飛び、水路をこえて山肌に、肩から激突した。

「お前の相手は、後でしてやる」

どどめ色は、ゆっくりとシルバーの眼鏡に手を伸ばす。

「今は、ガーディアンの力を手に入れるのが、先」


「さ、早奈英さん…」

九鬼は何とか、もう一度攻撃しょうとしたが、体が動かない。

「早奈英さん!逃げて!」

九鬼の叫びは、突然上がった水飛沫によって、かき消された。

九鬼とどどめ色達の間に流れる水路の疎水から、突然現れた二つの腕は、

一つは、どどめ色の顔面を強打し、

もう一つは、どどめ色の足首を掴むと、バランスを崩させ、水路閣の上から、どどめ色を落とさせた。

「なに!」

突然のことで、数メートル下に落下していくどどめ色。




「あれくらいで、死ぬとは思えんが…まずは、逃げるぞ」

二つの腕は、どどめ色を落とした後、九鬼が来た方へ戻っていった。

そこに立つものは!


「十夜さん」

九鬼は何とか、立ち上がると、水路を飛び越え、シルバーを抱き上げた。

十夜は、肘に戻った腕の感触を確かめてから、九鬼に向かって、笑った。