「ここからは、自由行動だ!」

何とか気を取り直した熊五郎の言葉に、生徒達は清水寺内に散らばった。


ほとんどの生徒が、有名な縁結びに向かっていく。

本堂の横の階段の上にある2つの離れた石。

目をつぶって、石から石までたどり着くことができたら、恋が実るといわれていた。

「あたし…見てきます。生徒会長は、休んでいて下さい」

気を使ってか…早奈英は1人で縁結びに向かった。

「気をつけて!階段があるわよ」


「大丈夫です!」

笑顔でこたえた早奈英のもとに、出遅れた夏希が駆け寄った。

「す、すいません」

夏希は、早奈英に肩を貸した。



本当は、つねにそばにいなければいけないのだが、

九鬼は少しだけ1人になりたかった。

清水寺の舞台の一番端で、手摺にもたれた九鬼は、深いため息をついた。


「どうやら…変身できないようだな?」

九鬼の横で、十夜が手摺にもたれた。

「十夜さん…」

九鬼は十夜を見ずに、

「何度も言ってるけど…あなたの髪は、校則違反よ」

「フッ」

九鬼の言葉に、十夜は笑った。

「違反は…俺にとっては、誉め言葉だ」

十夜は、九鬼のそばから離れた。



九鬼は、大きく息を吐くと、体を反転させ、清水寺の舞台から、京都の町並みを眺めた。