「ただいま!」

家に帰ったあたしは、普通にキッチンへ急いだ。

兄とは、敵味方に別れたとはいえ、

家では普通に過ごすのが、暗黙のルールだった。


「今日のご飯は、何?」

台所で、晩御飯の仕込みをしていた哲也が、振り返った。

「あなたの好きなカレーよ」

「え!?」

カレーは嬉しかったけど、あたしは兄の顔を…いや、体を…全身を見て、絶句した。

「あ、ああ…」

兄を指差し、言葉にならない声を発するあたしに、兄は恥じらいながら、

「じろじろ見ないでよ。恥ずかしいわ」

兄は、女になっていた。

「ど、どうして…」

兄は舌を出し、

「乙女ガーディアンの力を使い過ぎてね。男に戻れなくなったの」

「そ、そんな〜」

兄だった女は、頬に手を当てると、顔を真っ赤にして、

「これからは、里香って…姉貴って呼んでね」

と少し恥じらって見せた。

「い、いやああああ!」

あたしの絶叫も虚しく、

これからは姉と2人暮らしになってしまった。


「ところで、里奈…。あの日が始まったらしいのよ!どうしたらいいのか…お・し・え・て・ね!」

可愛く言う兄…姉に、あたしは悪寒が走った。


(い、一番…いやなことを…)




劇場版 乙女戦隊 月影


完。